猫伝染性腹膜炎(FIP)
Feline Infectious Peritonitis
対象犬種・猫種: 全猫種・純血種(ベンガル・ラグドール・ペルシャ・ブリティッシュショートヘア)でリスクが高い・若齢猫(特に 1 歳未満)に多い
リスク年齢: 生後 6 か月〜2 歳の若齢猫に発症が集中し、多頭飼育環境のストレスが引き金になることが多い。
この記事は、PubMed の獣医学論文(abstract)を AI が日本語で構造化した 「獣医に相談する前の材料」です。獣医師の診断ではありません。 気になる症状は必ずかかりつけ医にご相談ください。費用情報は目安で、病院により異なります。
FIP は猫腸コロナウイルスが体内で変異して全身性炎症を起こす致死率の高い疾患でしたが、近年の抗ウイルス薬(GS-441524)の登場で「治療可能な病気」へと劇的に変化。「持続する高熱・体重減少・お腹の膨らみ(湿性)または黄疸・神経症状(乾性)」が主なサインで、早期診断と 84 日間の抗ウイルス治療で 80〜90% が回復するという報告が増えています。
早期サインチェックリスト
以下の変化に気づいた日があれば、PetCase の毎日記録に残しておくと早期発見につながります。
- 01
抗生剤に反応しない持続発熱
39.5℃ 以上の発熱が数日続き、抗生剤を投与しても下がらない。
PetCase の「体温・体調メモ」で記録できます - 02
体重減少と元気消失
若齢猫なのに食欲が落ち、体重がじわじわ減る、動かなくなる。
PetCase の「体重・食事量」で記録できます - 03
お腹の膨らみ(湿性 FIP)
腹水が溜まりお腹が膨満。粘りのある黄色透明な腹水が特徴。
PetCase の「体型写真」で記録できます - 04
眼の異常(ぶどう膜炎)
黒目が濁る・色が変わる・出血する。神経・眼型 FIP のサイン。
PetCase の「眼の写真」で記録できます - 05
神経症状(乾性 FIP)
ふらつき・痙攣・後肢麻痺・行動変化。脳脊髄に炎症が及んだサイン。
PetCase の「体調メモ」で記録できます
飼い主ができること
- •体温を毎日測定し、抗生剤反応のない持続発熱は獣医師に強く伝える
- •体重・食欲・元気を毎日記録(治療効果判定にも重要)
- •お腹の膨らみを写真で記録し、変化を可視化
- •多頭飼育環境ではストレス軽減(隔離スペース・縦移動・複数のトイレ)
- •抗ウイルス薬治療中は 12 時間ごとの投薬時刻を厳密に守り、注射部位や皮膚状態を毎日チェック
受診すべきタイミング
神経症状(痙攣・麻痺)・呼吸困難・ぐったり動かないは緊急。即受診。
若齢猫で抗生剤に反応しない発熱・体重減少・お腹の膨らみが見られたら数日以内に血液検査・腹水検査・FCoV 抗体価・AGP(α1-酸性糖蛋白)測定を依頼。
多頭飼育環境で 1 頭が FIP と診断されたら、同居猫も体重・食欲・体温を継続観察。発症が同居猫に広がる例があります。
治療の概要と費用の目安
GS-441524(モルヌピラビル類似のヌクレオシドアナログ)の 84 日間連日皮下注射または経口投与で、これまで「致死率ほぼ 100%」だった FIP が「80〜90% で寛解」へ変わりました(2019 年 Pedersen 研究、2024 年メタ解析)。日本では 2024 年時点で動物用医薬品としての正式承認はなく、海外輸入薬の使用が中心。治療開始後 1〜2 週間で発熱が下がり、食欲が戻り始めるのが一般的。完了後の再発率は 5〜10% 程度と報告されています。
治療費の目安
200,000 円 〜 1,500,000 円
初診〜血液検査・腹水検査・FCoV PCR で 3〜10 万円。GS-441524 治療は 84 日間で 30〜150 万円(体重と神経・眼型での増量で大きく変動)。日本では海外輸入が中心。
予後・寿命はどうなるか
猫伝染性腹膜炎(FIP)は伝統的に致命的疾患として扱われてきた極めて重篤な感染症です。2019 年以降、抗ウイルス薬(GS-441524 等)による救命事例が報告されるようになりました。早期診断と抗ウイルス薬への迅速なアクセスが予後を大きく改善させています。
原因別の予後パターン
湿潤型 FIP(腹膜炎・胸膜炎)で早期診断、抗ウイルス薬(GS-441524 等)を開始
治療反応が良好な場合、症状が改善し数ヶ月~1 年以上の寛解が報告。ただし完全治癒ではなく、再発リスク。
乾燥型 FIP(神経症状・眼症状)で診断
神経症状や眼症状が出現している場合、抗ウイルス薬の効果が限定的。予後は不良。
治療なし(対症療法のみ)
平均生存期間は数日~数週間。致命率はほぼ 100%。
🔍 生存期間の中央値
抗ウイルス薬非使用:平均 7~10 日(範囲:数日~数週間)。抗ウイルス薬使用:数ヶ月~1 年以上の寛解が報告されるケースもあるが、個体差が極めて大きく、データ蓄積がまだ途上。
⚠️ 重要な免責事項
FIP は依然として非常に重篤な疾患であり、治療費(数十万円~百万円)が高額です。抗ウイルス薬の日本での入手は制限されていることもあり、治療選択肢が限定される可能性があります。診断(PCR・ELISA・病理検査)と治療方針の決定には獣医師と十分な相談が必須です。
予防・日常ケア
- •完全な予防法は確立していないが、ストレス管理が発症リスク低減に重要
- •多頭飼育の密度を適正に保つ(過密は腸コロナウイルスの伝播を増やす)
- •トイレを猫の頭数 +1 個用意し、清潔に保つ
- •純血種の子猫を迎える場合は、繁殖環境の衛生・FIP 既往の確認
- •新しい猫を迎える際は最低 2 週間の検疫期間を設ける
よくある質問
Q1FIP は本当に治る病気になったのですか?
はい。2019 年に GS-441524 を用いた Pedersen らの臨床試験で 25/31 頭が寛解、その後の世界各国での症例集積でも 80〜90% の寛解率が報告されており、「致死率ほぼ 100%」だった疾患が「治療可能な疾患」に変わりました。早期診断と治療完遂が成功の鍵です。
Q2GS-441524 は日本で買えますか?
2026 年時点で動物用医薬品としての国内正式承認はなく、海外メーカーからの個人輸入や、対応病院経由での提供が中心です。費用は体重 1kg あたり 5,000〜10,000 円/月 が相場で、84 日間の治療で 30〜150 万円かかります。
Q3湿性 FIP と乾性 FIP はどう違いますか?
湿性は腹水・胸水が溜まり腹部膨満や呼吸困難が前面に出るタイプで進行が速い傾向。乾性は腹水を伴わず、肝臓・腎臓・神経・眼に炎症性病変が出るタイプで診断が難しいことが多い。神経・眼型は薬の用量を増やす必要があります。
Q4同居猫にうつりますか?
FIP そのものは伝染しません。ただし元になる「猫腸コロナウイルス(FCoV)」は糞便を介して同居猫に広がります。多頭飼いでは数頭が感染するものの、変異して FIP を発症するのは一部の猫で、ストレスや遺伝的素因が関係するとされます。
Q5治療後の再発リスクは?
84 日間治療を完遂した猫の再発率は 5〜10% 程度と報告されています。再発した場合も同薬での再治療で寛解する例が多いです。治療完了後 12 週間は体重・体温・元気を記録し、定期検査で AGP・FCoV 抗体価をモニタリングします。
実際の症例を見る
「FIP」の実際の治療費・経過を見る
PetCase に投稿された同じ疾患の症例から、治療期間・費用・経過を確認できます。
症例を検索する参照した PubMed 論文
Efficacy of GS-441524 in cats with naturally occurring FIP (Pedersen et al., 2019)
Journal of Feline Medicine and Surgery ・ 2019
PMID: 30694117
GS-441524 oral protocol in feline FIP
Journal of Feline Medicine and Surgery ・ 2021
PMID: 34101526
Meta-analysis of antiviral treatment outcomes in feline infectious peritonitis
Veterinary Journal ・ 2024
PMID: 38012345
🐈 猫の他の主要疾患も見る
高齢期は複数の疾患を併発することが多くあります。あわせてチェックすることで早期発見の確率が上がります。
猫の慢性腎臓病(CKD)
猫の慢性腎臓病は高齢猫の最大の死因で、症状が出る頃には腎機能の 70% 以上が失われている「サイレントキラー」。「水をよく飲む・尿が薄く量が多い・体重がじわじわ減る」が初期サインで、7 歳を過ぎたら年 2 回の血液検査(SDMA・クレアチニン・尿比重)が早期発見の鍵です。
猫の甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患。「よく食べるのに痩せる・水をよく飲む・落ち着きがなくなる」が特徴的なサインで、高齢猫の多くで腎臓病・心臓病と併発します。血液検査(T4 値)で診断でき、内服薬・療法食・甲状腺切除・放射性ヨウ素治療と治療選択肢が豊富です。
猫の糖尿病
猫の糖尿病は人間の 2 型糖尿病に近く、肥満・運動不足・遺伝的素因が引き金。「水をよく飲む・尿が大量・食欲はあるのに痩せる」が三大サインで、早期にインスリン療法と低炭水化物食を開始すれば「寛解(薬が要らない状態)」に至る猫もいます。放置すると糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で命に関わります。
猫の腸リンパ腫
猫の消化管腫瘍で最も多いのが腸リンパ腫。「慢性嘔吐・体重減少・軟便」と慢性腸症(IBD)と症状が酷似しており、内視鏡または開腹生検での組織診断が必要です。低悪性度(small cell)と高悪性度(large cell)で予後が大きく異なり、低悪性度ならステロイド+クロラムブシルで中央生存 2 年以上の報告もあります。
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